冠詞(定冠詞・不定冠詞)

greek-allabout

ギリシャ語の冠詞(定冠詞・不定冠詞)の用法についてまとめます。

概説

冠詞は名詞の前に置かれ、名詞の性・格・数に応じて語形を揃えます。

  • ο σκύλος
    (特定の)犬
    this dog
  • ένας σκύλος
    (不特定の)犬
    a dog
  • οι σκύλοι της γυναίκας
    その女性の犬たち
    the woman’s dogs

定冠詞

既出・特定の対象

定冠詞は主に、既に言及されている、または話し手や聞き手から見えるところに存在する名詞(句)に対して用いられます。つまり英語のtheの基本的な用法と同じです。

次の例では、定冠詞が「友人」の前に置かれています。したがって、この「友人」は特定の人物を指しており、聞き手は既にその友人を知っている前提であることがわかります。

  • Ήρθε ο φίλος της Kατερίνας.
    カテリーナの(既に話題に挙がっている、特定の)友人が来た。
    Katerina’s friend came.

一方、次のふたつの例において「友人」は特定の人物を指していません。

  • Ήρθε ένας φίλος της Kατερίνας.
    カテリーナの友人(の一人)が来た。
    A friend of Katerina’s came.
  • Ήρθε κάποιος φίλος της Kατερίνας.
    カテリーナの友人(のうちの誰か)が来た。
    Some friend of Katerina’s came.

名詞が形容詞に修飾されているとき、文法的には冠詞があってもなくても問題ありません。既出・特定の意味を含めるなら定冠詞を用い、そうでないなら不定冠詞、または冠詞なしとします。

  • Θέλω την κόκκινη φούστα.
    私はその(既出・特定の)赤いスカートがほしい。
    I want the red skirt.
  • Θέλω μια κόκκινη φούστα.
    私は(不特定の)赤いスカートがほしい。
    I want a red skirt.
  • Φορούσε κόκκινη φούστα.
    彼女は赤いスカートを履いていた。
    She was wearing a red skirt.

人名

ギリシャ語では原則として、人名の前にも定冠詞を置きます。

  • Είμαι ο Πέτρος.
    私はペトロスです。
    I am Peter.
  • Ξέρεις τον Πέτρο;
    あなたはペトロスを知っている?
    Do you know Peter?

ただし、人名を表す名詞が次のような意味や役割を持つ場合、定冠詞は省かれます。

対象が不特定

  • Δεν ξέρω κανένα Πέτρο.
    ペトロスという知り合いはいない。
    I don’t know any Peter.

目的語を説明する「補語」

  • Με λένε Πέτρο.
    私の名前はペトロスです(直訳:彼らは私をペトロスと呼びます)。
    My name is Peter. (They call me Peter.)

呼格

  • Έλα, Πέτρο!
    ペトロス、来て!
    Come on, Peter!

地名

  • Πήγαμε στο Λονδίνο.
    私はロンドンに行った。
    We went to London.

天体

  • Ο Δίας είναι πλανήτης.
    木星は惑星です。
    Jupiter is a planet.

曜日

  • Θα σε δω την Kυριακή.
    日曜日に会いましょう。
    I’ll see you on Sunday.

月名

  • Ο Δεκέμβριος είναι ο πιο βροχερός μήνας.
    12月は最も雨の多い月です。
    December is the rainiest month.

季節

  • Δεν μʼ αρέσει ο χειμώνας.
    私は冬が好きではありません。
    I don’t like winter.

西暦

  • To 1995 ήταν καλύτερο.
    1995年のほうが良かった。
    1995 was better.

日付と時刻

  • στις τρεις
    3日に / 3時に
    on the third / at three

敬称・爵位とともに

固有名詞に敬称や爵位などが付いている場合、定冠詞はそれらの前に置きます。

  • ο κύριος Παυλόπουλος
    パヴロプロス
    Mr. Pavlopoulos
  • ο βασιλιάς Γεώργιος
    ジョージ
    King George

指示詞とともに

英語と異なり、指示限定詞(thisなどに相当)を用いる際にも、定冠詞は必要です。位置は「限定詞と名詞の間」になります。

  • αυτός ο σκύλος
    この
    this dog
  • εκείνος ο σκύλος
    あの
    that dog

抽象名詞

  • Δεν φοβάμαι τον θάνατο.
    私は死を恐れていません。
    I’m not afraid of death.
  • Ζει με την ελπίδα.
    彼は希望を持って生きています。
    He lives in hope.

分数

  • τα τρία τέταρτα των Ελλήνων
    ギリシャ人の4分の3
    three quarters of the Greeks

割合・率

  • το εβδομήντα τοις εκατό των Ελλήνων
    ギリシャ人の70%
    seventy per cent of the Greeks

名詞が省略されている場合

名詞が省略されている場合にも、本来の対象にあわせて定冠詞を用います。

  • ο πλούσιος
    裕福な男性
    the rich (man)
  • η πλούσια
    裕福な女性
    the rich (woman)
  • οι πλούσιοι
    裕福な人たち
    the rich (people)

「単語」として示す

ある名詞を「単語」として示す場合は、定冠詞の中性形を置きます。

  • Πώς γράφεται το “λεωφόρος”;
    “λεωφόρος”はどう綴りますか。
    How is “λεωφόρος” spelled?
  • Πώς είναι ο παρατατικός του “επιμένω”;
    “επιμένω”の非完結形は何ですか。
    What’s the imperfect of “επιμένω”?

曲などのタイトル

曲などのタイトルにも、定冠詞の中性形を用います。

  • το Πάτερ ημών
    『主の祈り』
    the Lord’s prayer

不定冠詞

特定されていない対象

不定冠詞は、まだ言及されていない、特定されていない単数の名詞(句)に対して用いられます。英語のa, anに相当。

  • Ήρθε ένας φίλος σου.
    あなたの友人(の誰か)が来た。
    Α friend of yours came.
  • Είδα ένα αυτοκίνητο.
    私は車を見た。
    I saw a car.

強調の意味

そのほか、状態などを強調するために用いる場合があります。

  • Έχω μια πείνα.
    とてもお腹が空いた。
    I’ve got a (great) hunger.

冠詞を用いない場合

名詞が次のような役割・意味を持つ場合には、冠詞を用いません。

補語の役割

英語の第二文型SVCの補語Cにあたる名詞、つまり主語と同じ対象を指す述語となる名詞(人名以外)。

  • Είναι καθηγητής.
    彼は教授です。
    He’s a professor.
  • Έγινε καθηγητής.
    彼は教授になった。
    He became a professor.

また「人名」の項で例を挙げたとおり、英語の第五文型SVOCの補語Cにあたる名詞、つまり目的語を説明する名詞にも冠詞を置きません(人名を含む)。

  • Με λένε Μάρκο.
    私の名前はマルコです(直訳:彼らは私をマルコと呼びます)。
    My name is Mark.

ただし、形容詞や人称代名詞などで修飾されている場合には、不定冠詞を用いることもあります。

  • Είναι ένας καλός καθηγητής.
    彼は良い教授です。
    He’s a good professor.
  • Είναι ο καθηγητής μας.
    彼は私たちの教授です。
    He is our professor.

対象全般を表す場合

種や数量を問わず、名詞が示す対象全般を表す場合。例えば「魚」が好き、というような表現。

  • Μ’ αρέσει να τρώω ψάρι.
    私は魚を食べることが好きです。
    I like eating fish.
  • Γράφει βιβλία
    彼は本を書きます(特定の作品を指さずに)。
    He writes books.
  • Θέλω ψωμί.
    私はパンを食べたい。
    I want some bread.

疑問文・否定文

肯定文であれば冠詞を用いるべき名詞であっても、疑問文や否定文では省略されることが多いです。

  • Δεν οδηγώ αυτοκίνητο.
    私は車を運転しない。
    I don’t drive (a) car.

特定の動詞の目的語

慣用的に、έχω(have)やκάνω(do, make)など、特定の動詞の目的語となる名詞には冠詞を置きません。

  • Εχω πονοκέφαλο.
    頭が痛い。
    I have a headache.
  • Κάνει ζέστη.
    暑い。
    It’s hot.
  • Κάνω μπάνιο.
    私はお風呂に入る。
    I have a bath.
  • Σπουδάζω μουσική.
    私は音楽の勉強をする。
    I study music.
  • Παίζω πιάνο.
    私はピアノを弾く。
    I play the piano.