動詞は通常、主語の名詞句の人称・数によって語形変化します。
しかし、たとえば非人称動詞のように、動詞側が論理上の主語(の人称・数)を提示するケースも多々あります。
本ページではそのような動詞の用法についてまとめました。
原則(主語との一致)
ふつう、動詞の語形は主語の名詞句の人称と数と一致します。
Εσείς δεν θα του πείτε τίποτα.
あなたたちは彼に何も言わないのでしょう。
You will not tell him anything.
Ο Γιάννης ποτίζει τον κήπο του κάθε πρωί.
ヤニスは毎朝庭で水やりをする。
John waters his garden every morning.
つまり動詞の語形が主語の人称・数を明示するので、ふつう、主語となる代名詞は省略されます。
Δεν θα του πείτε τίποτα.
あなたたちは彼に何も言わないのでしょう。
You will not tell him anything.
敬称(二人称複数)
代名詞の二人称複数形は、複数人が相手である場合だけでなく、相手に敬意を示す場合にも使用されます。この表現はギリシャ語だけでなく、ヨーロッパの多くの言語で見られます。
この場合、動詞は論理的な主語に合わせて二人称複数形に変化します。
したがって、先に挙げた例文の主語は「二人称複数形(あなたたち)」とも「丁寧な単数形(あなた)」とも解釈でき、どちらの意味であるかは文脈によって判断する必要があります。
Εσείς δεν θα του πείτε τίποτα.
あなたたちは彼に何も言わないのでしょう。または
あなた(敬称)は彼に何も言わないのでしょう。
You will not tell him anything.
Δεν θα του πείτε τίποτα.
あなたたちは彼に何も言わないのでしょう。または
あなた(敬称)は彼に何も言わないのでしょう。
You will not tell him anything.
不特定多数への言及(二人称単数、三人称複数、一人称複数)
主語が特定されない誰かであるときには、二人称単数や三人称複数、一人称複数などがさまざまに用いられます。
Στο εστιατόριο αυτό τρως φτηνά και καλά.
あのレストランは安くておいしい。
→あなたはあのレストランで安くおいしく食べることができる。
In that restaurant you can eat cheaply and well.
Μπορείτε να μου πείτε πού πουλάνε εφημερίδες εδώ κοντά;
このあたりで新聞を売っているところを教えてください。
→このあたりで彼らが新聞を売っているところを教えてください。
Can you tell me where they sell cigarettes around here?
不特定多数の主語に自分(や身近な人々)が含まれるような文脈では、一人称複数が選択されることが多いです。
Στα Καλάβρυτα φτιάχνουν καλά τυριά.
カラブリタでは良いチーズが作られている。
→カラブリタでは、彼らは良いチーズを作っている。
In Kalavryta, they make good cheese.
Στα Καλάβρυτα φτιάχνουμε καλά τυριά.
カラブリタでは良いチーズが作られている。
→カラブリタでは、私たちは良いチーズを作っている。
In Kalavryta, we make good cheese.
特定的な不定代名詞のかわり(三人称複数)
話者の頭の中ではある程度の特定がなされているもの、つまりsomeoneを主語にとるような文において。
Χτυπάνε την πόρτα.
彼らが(誰かが)ドアをノックしている。
Someone is knocking on the door.
相手への敬意や愛情(三人称単数)
誰かに敬意や愛情を込めて話しかけたいとき、その相手を三人称扱いにすることがあります。
Τι θα ήθελε ο κύριος;
(男性に向けて)何をお望みですか。
→紳士は何を望んでいますか。
What might the gentleman want?
Τι κάνει ο ασθενής μας σήμερα;
(医者などから患者に向けて)今日はいかがですか。
→私たちの患者さん、今日はいかがですか。
How is our patient today?
一般に適用される指示・命令(一人称複数)
レシピの手順説明などには一人称複数が用いられます。
Ρίχνουμε λάδι σε ένα μεγάλο τηγάνι.
大きな鍋に油を入れます。
→私たちは大きな鍋に油を入れます。
We pour oil into a large pan.
非人称動詞(三人称単数)
非人称動詞は、意味的には明確な主語を持たず、論理的な主語として三人称単数をとります。これは、英語で主語として「It」を使用する構文に相当します。
天気・天候
Βρέχει πολύ.
激しい雨が降っています。
It’s raining heavily.
Δεν κάνει κρύο.
寒くないです。
It’s not cold.
実存を表すέχω
英語のhaveに相当する動詞έχω。三人称単数を論理上の主語とし、実在(ある・いる)を表すことがあります。
Έχει ψάρια απόψε;
今夜、魚はいますか。
Is there fish tonight?
補語節を伴う非人称動詞
特定の非人称動詞は、構文上の主語とみなされる補語節を必要とします。補語節は、接続法ではνα、直説法ではότιによって導入されます。
Πρόκειται να πάω στην Ελλάδα σύντομα.
私はすぐにギリシャへ行くつもりです。
I am going to go to Greece soon.
Φαίνεται ότι οι φίλοι μας προτιμούν την ταβέρνα.
私の友人はタヴェルナを好むようです。
It seems that our friends prefer the taverna.
なお、上の例文において、補語節の主語である名詞句οι φίλοι μας(私の友人)は任意の位置に移動することがあります。動詞の後や目的語の後、あるいは非人称動詞の前に置かれることもあります。
Οι φίλοι μας φαίνεται ότι προτιμούν την ταβέρνα.
私の友人はタヴェルナを好むようです。
It seems that our friends prefer the taverna.
πρέπειとμπορείは接続法να節を必要とします。
Οι φοιτητές πρέπει να μελετούν όλο το εξάμηνο.
学生は学期全体を通して勉強しなくてはならない。
The students must study during the whole semester.
Πρέπει να συναντήθηκαν στο πάρκο.
彼らは公園で会ったに違いない。
They must have met in the park.
Μπορεί να φύγουμε άυριο.
私たちは明日出発するかもしれない。
We may leave tomorrow.
なお、μπορείの辞書形μπορώは、能力の様相性を示します。ようするにcanのように用います。
Δεν μπορώ να τρέξω γρήγορα.
私は早く走ることができない。
I cannot run fast.
μπορώの三人称単数は当然μπορείなので、意味をどうとらえるかは文脈で判断するほかありません。
Μπορεί να σε καταλάβει.
彼女はあなたを理解できる。または
彼女はあなたを理解するかもしれない。
She can / may understand you.