法と様相性

ギリシャ語の動詞が示す様相性についてまとめます。

目次

概説

モダリティ (modality) または法性(ほうせい)、様相性(ようそうせい)とは、話している内容や聞き手に対する話し手の判断や態度(attitude)に関する言語表現の概念体系である。

モダリティ - Wikipedia

さまざまな様相性(モダリティ)のうち、特に「動詞の語形、または動詞に先行する小辞」で表される体系をといい、ギリシャ語においては直説法接続法命令法の三種が区別されます。

  • 直説法
    • 動詞の前の小辞(ある場合):να, ας以外。θαなど
    • 否定の小辞:δεν
  • 接続法
    • 動詞の前の小辞:να, ας
    • 否定の小辞:μην
  • 命令法
    • 動詞の命令形
      • 能動態では四種類
      • 受動態では二種類

文が表す出来事の現実との関係(事実的か反事実的か)や意図、聞き手に対する態度などを表す。特に動詞の形態に反映された場合のことを言うが、モダリティ(法性)と同義で語られることもある。

法 (文法) - Wikipedia

直説法

直説法:δενで否定され、να, αςを伴わない動詞が示す法

直説法は、状態や出来事を過去・非過去のいずれかに位置づけ、事実(真偽を判断できる内容)を表します。

Γράφει συχνά στη μητέρα του.
彼はしばしばお母さんに手紙を書く。
He writes often to his mother.

Δεν γράφει συχνά στη μητέρα του.
彼はあまりお母さんに手紙を書かない。
He writes (does not write) often to his mother.

Το έγραψα για σένα.
私はあなたにそれを書いた。
I wrote it for you.

Δεν το έγραψα για σένα.
私はあなたにそれを書かなかった。
I did not write it for you.

未来の話は、少なくとも発話の時点では「事実」ではありませんが、実現可能性のある状態や出来事を主張する、という意味において、ふつうは直説法の一部として扱われます。

Θα γράψω το γράμμα απόψε.
私は今夜手紙を書くだろう。
I will write the letter tonight.

Δεν θα γράψω το γράμμα απόψε.
私は今夜手紙を書かないだろう。
I will not write the letter tonight.

接続法

接続法:μηνで否定され、να, αςを伴う動詞が示す法

接続法は、仮定や願望などの「考え」を表します。話者、あるいは主節における主語の希望や要求、命令、譲歩、許可…などが述べられます。

Να γράφει στη μητέρα του.
彼はお母さんに手紙を書くべきだ。
He should write to his mother.

Να μην γράφει στη μητέρα του.
彼はお母さんに手紙を書くべきではない。
He should not write to his mother.

αςは直接話法で、つまり発話をそのまま表現する場合にのみ出現し、勧告や同意、承認、感謝…などを示します。また、αςが動詞の非完結過去形と組み合わされるときには「実現されない願望」を表します。

主節のναは、主に「命令法」より弱い命令的な表現や指示、要求、願いなどを表します。

Να/ας του το έλεγες.
あなたは彼にあのことを話すべきです。
You should have told him that.

Να/ας μην του το έλεγες.
あなたは彼にあのことを話すべきではありません。
You should not have told him that.

Να μην γράψω το γράμμα απόψε;
私は今夜手紙を書くべきではないですか。
Shouldn’t I write the letter tonight?

Ας μην τον ενοχλήσουμε τώρα.
今は彼に迷惑をかけないようにしましょう。
Let us not bother him now.

ναの省略

「禁止の命令」を表す接続法のναは省略されることがあります。

Να μην του το δώσεις.
彼にそれをあげてはいけない。
Do not give it to him.

Μην του το δώσεις.
彼にそれをあげてはいけない。
Do not give it to him.

命令法

動詞には「命令」を表す固有の語形があり、これを用いた表現が命令法と呼ばれます。

命令法:動詞の「命令形」が示す法

Διάβαζε πιο δυνατά, σε παρακαλώ.
大きな声で読んでください。
Read louder, please.

先にまとめたとおり、接続法で命令の意図を表すことも可能です。上の例文を接続法で書き換えると次のようになります。

Να διαβάζεις πιο δυνατά, σε παρακαλώ.
大きな声で読んでください。
Read louder, please.

接続法による命令表現

動詞の能動態は、四種類の命令形をもちます。二人称単数と複数、それから非完結相と完結相との組み合わせです。

非完結相完結相
二単διάβαζεδιάβασε
二複διαβάζετεδιαβάστε
διαβάζω(読む)の命令形

一方、受動態で非完結命令形が用いられることは稀で、基本的には完結命令形のみが用いられます。

完結相
二単ντύσου
二複ντυθείτε
ντύνομαι(服を着る)の命令形

したがって、受動態では命令法によって繰り返し・継続的な命令を表すことができません。これを表現する際には接続法を用います。

Να ντύνεσαι.
服を着ていなさい(服を着ているべきだ)。
you should dress.

また、命令法には否定の表現がありません。したがって、禁止の命令を表す際にも接続法が用いられます。

Να μην γράφεις.
書いてはいけない(書くべきではない)。
Don’t (should not) write.

様相性

直説法・接続法・命令法を除く、さまざまな手段で表現される表現(様相性・モダリティ)についてまとめていきます。

条件

ifを用いた条件文、仮定法に相当する表現です。

条件節(if節)は多くの場合、ανによって導かれます。フォーマルな表現ではεάνが、口語的な表現ではάμα, έτσι καιが用いられることもあります。

また、否定の小辞にはδενが用いられます。

もし…ならば

First Conditionalに相当する「もし…ならば、…でしょう」といった不確実な想像や仮定の表現。各節の動詞は、次のいずれかの形をとります。

  • 条件節(αν…)の動詞
    • 現在時制(現在形・従属形)
    • 完結相過去形
    • 未来表現
  • 主節の動詞
    • 条件節と同じ時制
    • 接続法
    • 命令法

条件節:現在 - 主節:現在
Αν ξέρεις Αγγλικά είσαι κατάλληλη για τη δουλειά αυτή.
もし英語を知っているなら、あなたはこの仕事に適している
If you know English you are suitable for this job.

条件節:未来 - 主節:未来
Αν θα πάω στην Ελλάδα θα προσπαθήσω να τον δω.
もしギリシャに行くなら、彼に会ってみるつもりだ。
If I go to Greece I will try to see him.

条件節:未来 - 主節:接続法(+接続法)
Αν θα πας στην Ελλάδα να προσπαθήσεις να τον δεις.
もしギリシャに行くならあなたは彼に会ってみるべきだ。
If you go to Greece you should try to see him.

条件節:従属形 - 主節:命令法(+接続法)
Αν πας στην Ελλάδα πήγαινε να τον δεις.
もしギリシャに行くなら彼に会いに行きなさい
If you go to Greece go and see him.

条件節:完結相過去 - 主節:完結相過去
Αν βρήκε το γράμμα θα το διάβασε σίγουρα.
彼が手紙を見つけたのなら、確実に読んだだろう。
If he found the letter he must have read it for sure.

条件節:完結相過去 - 主節:現在完了(上の例文の書き換え)
Αν βρήκε το γράμμα θα το έχει διαβάσει.
彼が手紙を見つけたのなら、確実に読んだだろう。
If he found the letter he must have read it for sure.

一般的な真実

上と同じ形式によって、Zero Conditional(一般的な真実)に相当する表現もできます。

条件節:現在- 主節:現在
Αν είναι μεσημέρι εδώ, στην Αυστραλία είναι μεσάνυχτα.
ここが正午なら、オーストラリアは真夜中だ。
If it is midday here, in Australia it is midnight.

反事実

事実に反することを述べる、英語の「仮定法」に相当する表現。

条件節はαν, εάνまたはάμα、主節はθαで導かれ、動詞は次のいずれかの形をとります。

  • 条件節(αν…)の動詞
    • 非完結過去形
    • 完了相(現在完了形・過去完了形)
  • 主節(θα…)の動詞
    • 非完結過去形
    • 完了相(現在完了形・過去完了形)

条件節:非完結過去- 主節:非完結過去
Αν διάβαζες το γράμμα του θα καταλάβαινες.
もしあなたが彼の手紙を読めば、理解できるのに。
If you were to read his letter you would understand.

条件節:過去完了- 主節:非完結過去
Αν είχες διαβάσει το γράμμα του θα καταλάβαινες.
もしあなたが彼の手紙を読んでいたら、理解できたのに。
If you had read his letter you would understand.

条件節:非完結過去- 主節:過去完了
Αν διάβαζες το γράμμα του θα είχες καταλάβει.
もしあなたが彼の手紙を読んでいたら、理解できたのに。
If you had read his letter you would have understood.

条件節:過去完了- 主節:過去完了
Αν είχες διαβάσει το γράμμα του θα είχες καταλάβει.
もしあなたが彼の手紙を読んでいたら、理解できたのに。
If you had read his letter you would have understood.

願望

何かの実現を願う文は、主に次のような形式でつくられます。

  • 接続法(να, ας + 動詞)
  • 迂言形による表現
    • 感嘆詞μακάρι + 接続法
    • 接続詞που + 接続法
  • 願望を表す主動詞 + 接続法

Να 'ρχότανε να τον βλέπαμε.
私たちが彼に会えるよう、彼が来てくれたらいいのに。
I wish he would come so we could see him.

Ας τον δω κι ας πεθάνω.
彼に会ってからしなせてほしい。
Let me see him and then die.

Μακάρι/Που να μην τον είχα συναντήσει.
彼に出会っていなければなあ。
If only I had never met him.

Εύχομαι να μην τον ξαναδώ.
二度と彼に会いたくない。
I hope I never see him again.

義務

「必要である、しなければならない」は、動詞πρέπειと接続法で表します。

  • 非人称動詞として(It is necessary that…)
    • πρέπει + να
  • 主語を明示する場合(must, should)
    • 主語 + πρέπει + να

Πρέπει να φύγουμε πριν έρθει ο Γιώργος.
イオルゴスが来る前に私たちが出発する必要がある
→私たちはイオルゴスが来る前に出発しなければならない。
It is necessary that we leave before George comes.
→We must leave before George comes.

Οι φίλοι σου πρέπει να σε καταλάβουνε.
あなたの友人はあなたを理解すべきだ
Your friends must (should) understand you.

πρέπειは非完結相、能動態のみの動詞ですが、時制等は区別されます。

  • πρέπει:現在の義務
  • έπρεπε:過去の義務(履行されたかどうかは任意)
  • θα πρέπει:未来の義務
  • θα έπρεπε:未来の(暫定的な)義務、あるいは過去に履行されなかった義務

Έπρεπε να του το λέγαμε.
私たちは彼に言うべきだった。
We should have told him.

義務の表現においてθαを用いる目的は、時制を未来に置くことそのものより、断言のニュアンスを弱めることにあります。

Θα πρέπει τελικά να πας να του μιλήσεις.
最終的にあなたは彼と話をしに行くことになるだろう。
You will finally have to go and talk to him.

Θα έπρεπε να φύγουμε πιο νωρίς.
私たちは早く去るべきだった。
We should have left earlier.

否定(不承認・禁止)

πρέπειに否定の小辞を用いると、不承認や禁止を表します。

  • δεν + πρέπει
  • 補部内での否定:να + μην

Δεν πρέπει να μιλάς έτσι.
あなたはこのように話すべきではない。
You should not speak like this.

Πρέπει να μην μιλάς έτσι.
あなたはこのように話すべきではない(直訳:話さないべきだ)。
You should not speak like this.

可能性・能力

英語のmay, canに相当する「たぶん…だろう」や「…することができる」の表現。

論理上の主語を用いた表現

  • 非人称動詞μπορεί + να…
  • 副詞ίσως
    • + να…
    • + 従属形

Μπορεί να βρέξει αύριο αλλά μπορεί και να μην βρέξει.
明日は雨が降るかもしれないし、降らないかもしれない。
Maybe it will rain tomorrow but maybe it will not rain.

Ίσως (να) βρέξει αύριο.
おそらく明日は雨が降るだろう。
Perhaps it will rain tomorrow.

μπορείは主に現在形が用いられ、多くの場合、時制や相はνα節で表現されます。

Μπορεί να έφυγαν κιόλας.
彼らは既に去ったかもしれない。
They may have already left.

否定の小辞もνα節側に用いられるのが一般的です。

Μπορεί να μην έφυγαν κιόλας.
彼らはまだ去っていないかもしれない。
They may not have already left.

ただし、何かが起こっている(起こった)こと自体を否定する場合はδενでμπορείを打ち消します。

Δεν μπορεί να έφυγαν κιόλας.
彼らが既に去ったということはあり得ない(不可能だ)。
It is impossible (not possible) that they have already left.

主語を明示する表現

μπορώは非人称動詞としてではなく、単に主語の能力を表す手段として用いることもできます。I can, You can…といった表現。

  • (意味上の主語)+ μπορώの人称変化 + να

Μπορώ να σηκώσω τη βαλίτσα χωρίς δυσκολία.
私はスーツケースを問題なく持ち上げることができる。
I can lift the suitcase without difficulty.

Μπορούσε να φάει δέκα αβγά για πρωινό.
彼は朝食に10この卵を食べることができた。
He could eat ten eggs for breakfast.

許可を表すμπορώ

英語のmay, canと同様、μπορώは「許可」の意味を表すこともあります。

Αν θέλετε μπορείτε να πάτε να τον δείτε.
あなたが望むなら、彼に会いに行っても良い。
If you wish you may go to see him.

確率・推論

強い可能性「…に違いない」や、話者が知っている・想定している事実に基づく推論の表現。

  • 非人称動詞πρέπει + να…(接続法)
  • θα + 動詞(任意の語形)…

Πρέπει να έβρεξε τη νύχτα γιατί το έδαφος είναι υγρό.
地面が湿っているので、夜に雨が降ったに違いない
It must have rained in the night because the ground is wet.

Θα τον φοβάται πολύ, γι’ αυτό κρύβεται.
彼女は彼をよほど恐れているのだろう、だから隠れているのだ。
She must be very much afraid of him, that’s why she is hiding.

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