ギリシャ語の表記体系のうち、近年の綴り方の原則とさまざまな例外についてまとめました。
正書法
ギリシャ語の正書法では、できる限り古代ギリシャ語の綴り方を採用することが原則です(発音区別符号の使用方法は除く)。
また、単語や形態素が古代ギリシャ語から直接派生していない場合や大幅に変化している場合は、「最も単純な綴り」として以下のルールが適用されます。
- [e] - ε
- [i] - ι
- [o] - ο
- [af], [av] - αφ, αβ
- [ef], [ev] - εφ, εβ
これらの原則に従えば、古代ギリシャ語で綴られた記録のある単語はそのまま綴られます。例えば、「8月」を意味する単語はΑύγουστος(ラテン語由来)として綴られます。
一方、語源は古代ギリシャ語でも、後に音の変化が生じた単語(例:中世ギリシャ語から[v]や[f]の音が追加されたαυγό(卵)やαυτί(耳))は、それぞれαβγόやαφτίと綴ることが推奨されます。
しかしながら、このような「簡略化」を受け入れない人も多く、現代ギリシャ語の綴りにはさまざまなバリエーションが存在します。
また、語源や由来の解釈は時代や研究によって変化することがあります。その結果、推奨される綴りが世代間で異なることがあり、これもバリエーションの原因となっています。
例えば、σβήνω(消す)という単語はかつて「古代ギリシャ語のσβεννύωが語源である」と解釈され、少し前の世代では"σβύνω"と綴られることが一般的であり、その綴り方を学んだ人々の多くは今でも変更しません。
しかし、最近になって「古代ギリシャ語の時点でσβέννυμι→ἔσβησαν→σβήνωと派生し、これを継承する」という解釈が一般的となり、今では"σβήνω"と綴ることが推奨されています。
このように、ギリシャ語の綴りには解釈や世代による変化が存在することに注意が必要です。上記の例のように、新しい研究や解釈が現れることで、推奨される綴りが変わることがあります。
また、ギリシャ語の正書法においては、単語の発音や語源に基づいて特定の綴りを推奨する一方で、個人や地域によっては異なる綴り方が好まれることもあります。
これは言語の生きた特性であり、言語使用者の間での様々なバリエーションが存在することを意味します。
したがって、ギリシャ語を深く学ぶ際には、一般的な綴り方や推奨されるルールに加えて、実際の使用例や地域の言語状況にも注意を払う必要があります。
それによって、より正確で適切なギリシャ語の表現を身につけることができるでしょう。
外国語の転写
外国語の転写においても、特に固有名詞では「最も単純な綴り」を原則とすることが推奨されます。
- Peter - Πίτερ
- Baudelaire - Μποντλέρ
しかしながら、この原則も完全には受け入れられていないため、昔ながらの転写の規則を好む人々も依然として存在します。そのような規則下では、英語の長い音のeはη、フランス語のaiはαι、auはω…といった複雑なシステムが用いられます。
- Peter - Πήτερ
- Baudelaire - Μπωντλαίρ
外国語(特にラテン文字)の使用
ファッション雑誌や広告などの若者文化に関連する媒体では、外国語そのままの表記が使用されることがあります。
一部の保守的な言語学者は、これらの単語もギリシャ文字で転写されるべきだと主張していますが、実際には外国語とギリシャ語が併記されることが一般的です(特に大文字での併記が一般的です)。
- EXTRA ΤΕYΧΟΣ - 特集号
- TA MUST TOY ΧΕΙΜΩΝΑ – 冬の必需品
- 10 WEEK ENDS ΣΤΗΝ ΕΛΛΑΔΑ - 10このギリシャの週末旅行
大文字と小文字の使い分け
英語などと同様に、文や固有名詞、曜日や月名の先頭などでは大文字が使われます。
以下に、英語とは異なる使い分けのルールをいくつかまとめます。
固有名詞からの派生語
ギリシャ語では、固有名詞から派生した単語は通常、先頭を小文字にします。
- ο Έλληνας πρωθυπουργός
ギリシャの首相, the Greek prime minister - ο ελληνικός πολιτισμός
ギリシャの文化, Greek culture
敬称
人名の前に置かれる敬称は小文字となります。
- η κυρία Μπότση
Mrs. Botsi
書籍などのタイトル
英語では「タイトルの各単語」を先頭大文字とするのが原則ですが、ギリシャ語では(固有名詞を除き)先頭を小文字で表記するのが一般的です。
- Ο Χριστός ξανασταυρώνεται
- Christ Recrucified